(イラスト:越智さゆり IL


水田 茉莉花の『聖なる夜に恋の魔法を!』
桂木京介 GM

プラン

アクションプラン

水田 茉莉花
(八月一日 智)
(聖)


待ってちょっと二人とも、あたしっ、上手くスキーで動けな…(開脚尻もち)
仕方ないでしょ!保育士やってたら雪遊びの経験位しか積まれないもの…きゃあ!
(前後開脚尻もち)

え、ひーくんにストック持たれたらあたし転んだときにどうすれば良いの?
こ、こんなところ持って大丈夫?刺さらない?

も、もうダメ、へとへと、お腹すいた!
…二人とも元気有り余ってそうですね、あたしは一杯で良いです
(食事中におずおずと)そうだ、午後は二人でバトルしてきたらどうですか?
あたしはロッジで休んでるから…

リザルトノベル

「ほら、勇気出してやってみろー!」
 八月一日 智は、ストックを握ったまま両手を上げた。
 今日の空は、『蒼』という概念を全力で象徴しているのかと思うくらいに蒼い。
 対する地上の世界は『白』の概念の象徴といえようか。とにかく雪、どこまでも雪、果ての見えぬ雪景色だ。
 そんな白い雪を平らにならしその上を滑る場所……すなわちスキー場でのクリスマス、とくればハッピーなイメージがあるはずだが、水田 茉莉花がいま、その対局とも言うべきピンチの渦中にあるのはなぜなのか。
「勇気って簡単に言うけど、技術力がついていかないという状況もあるってことわかってくださいね!!」
 と抗議するのだけども智は全然聞いていないようだ。
「目指すなら頂点! コースなんてのは上級者コース一択だ!」
 楽しげかつ勇ましく言って、額のゴーグルを目の位置に下げたのである。
 智は黒虎柄のスキーウェアを着ている。彼の毅然とした口調には似合っているものの、童顔のせいもあり『少年が自分の強さを誇示しようと背伸びしているみたい』という印象を茉莉花は持っていた。(まあ、それはそれでチャーミングではあるのだが)
 このとき、
「まってください」
 手を上げたのは聖だ。着ているスカイブルーのウェアは、派手さはないものの上品かつ知的で、クールな優等生然としたイメージがある。
「そんなチビパパはスキーできるんですか?」
 オレンジ色のゴーグルの下から、聖は大きく愛らしい目をぱちくりとしていた。
「なーに愚問言っちゃってるかなこのチビ助」
 智は、にやりと不敵な表情を浮かべると、
「おれの板さばき見てろっっつーんだ! 付いてこい!」
 ばっと跳躍するような動きで意気揚々、スキー選手さながらに飛び出したのである。
 傾斜が急な上に蛇行しており、しかも途上に木々が配置されているという、スリリングな林道をゆくスキーコースだ。『上級者コース』の名は伊達ではない。
 だが智は大見得を切っただけあって、イルカが荒海を泳ぐように、すいすいと林道を縫って進んでいく。
「ひー助来いよ! みずたまりもだ!」
 そんな声が風に乗って上がってきた。
 茉莉花は軽くつばを飲み込んでいた。眼下の斜面はまるで千尋の谷だ。足がすくむほどの極端な傾斜がついており、延々と続いていて先が見通せない。もしかしてゴール地点は、竜の口につながっているのではあるまいか。
「ちょ、ちょっと、ひーくんはできるの!? 危なくない!?」
 茉莉花が問いかけたとき、すでに聖は構えを取っていた。
「だいじょうぶです。ぼくにはスキーの天ぷのさいのうがあるので、パパと同じぶ台でも負けません」
 と告げるやニコと笑み、滑空する燕のように急斜面に身を躍らせていた。
 言葉に嘘はなかった。聖も恐るべき動体視力で障害をかわし、前傾姿勢をとって加速を続けている。たちまちその背は遠ざかっていくではないか。
 無理矢理連れてこられた上級コース、そのスタート地点で、茉莉花はひとり、ぽつんと残される格好になってしまった。
 ちなみに彼女の本日のウェアは、オレンジ基調のマーブル模様、この日のためにうんと悩んで選んだもので、白銀の世界に似合う華やかなものだった。それだけに、置いてけぼりにされると寂しさもひとしおだ。
「ちょっと二人とも!」
 呼ぶがもう、智はもちろん聖の背も見えない。声は空しくこだまするだけだ。
 こんなところに取り残されてはたまらない。茉莉花はこわごわと一歩を踏み出した。彼女ができる滑りかたといえば、基本中の基本であるボーゲンだけである。
 そしてボーゲンは、こんな場所を滑るのに適しているとは言いがたい……!
 けれどもいつまでもこうしているわけにはいくまい。南無三、と茉莉花は覚悟を決めデスロードに突入した。
 ぞりぞりぞりぞり……と硬い姿勢で滑走する。できるだけセーブしようとするのだがそれでも加速は高まり、周囲の光景は昔の映画の書き割りみたいにどんどん後方に流れていく。彼女は唇を噛み、ぐっと下腹に力を入れてスピードに乗った。障害物もそれなりに回避しいくつかのカーブもなんとか曲がりきった。
 健闘はしたといえよう。
 だがやはり、『そのとき』は訪れた。
 曲がりきれないカーブだった。茉莉花は悲鳴に似た声を上げた。
「あたしっ、上手くスキーで動けな……!」
 ずでん。
 転んだ。というか、開脚姿勢で尻餅をついたのだった。
 しかも運悪く新雪の地点に着地したらしい。つまり、深く埋まった。
 怪我らしい怪我がないのが不幸中の幸いだろうか。
「うう……冷たい……」
 ウェアの間からさらさらの雪が入り込んでくる。抜け出すべく茉莉花はもぞもぞと動くも、ばらばらと雪が落ちるばかりでますます深みにはまってしまった。ちょっとやそっとでは脱出できそうもない。
「最悪……」
 脱力して彼女は、そのままの姿勢で溜息をついた。
 見上げる空が、とてつもなく青かった。
 どらくらい経ったのか、
「みずたまり何やってんだ!」
 頭上から智が滑り降りてきた。早くも二周目に挑戦したものだろう。ずしゃあっと雪を煙のように舞い上げて彼は停止すると、
「こんなところで……って、えーっ!」
 これは演技ではない。あきらかに智は素で驚いている。
「……ご覧の通りです」
「怪我、してないか!?」
「なんとか」
「勇気がなかったのか」
「だから、勇気ではフォローできないものもあるんですってば!」
 くわっと目を三角形にし、茉莉花は勢いよく立ち上がった。
「仕方ないでしょ! 保育士やってたら雪遊びの経験くらいしか積めないんです!」
 やった、抜けられた! と思ったがそれも一瞬のことだった。
「……きゃあ!」
 どっ、と今度は、前後開脚の姿勢で茉莉花は尻餅をついてしまったのである。どうも勢いがよすぎたらしい。
「え、ママ?」
 そこに、颯爽たる滑りを見せて聖も到着した。
「大丈夫ですか、ママ!?」
「はは……まあね、ひーくん」
 あまり格好いいポーズではないこともあり、茉莉花はぽりぽりと頬をかく。
 けれど茉莉花が姫君ならば、智と聖が、彼女の騎士であることは間違いない。
「とにかく、みずたまりに手を貸せ。掘り起こすぞ!」
「はい……!」
 彼らは協力しあうことに決めたようだ。
「慎重にな。下手するともっと大変なことになる」
「はい、さいだいげんのちゅういをはらいます」
「……あのね、人を不発弾みたいに言わないでくれる?」
 釈然としない口調で茉莉花は、右手を智に、左手を聖に持ってもらい引っ張り上げられたのだった。
 とはいえ智と聖が自分の世話を焼いてくれるということ、その感覚は……悪いものではなかった。

 さてこのアクシデントの結果、
「……しょ心者コースにいきませんか、パパ?」
 と聖は提案した。
「そーだな、みずたまりが動けるようにしないとな」
 上級者コース一択、と息巻いていた智もあっさりと方針を変更したらしい。
「それでいいな? みずたまり?」
「もちろんです。それで、二人のどちらがあたしにスキーを教えてくれるんでしょう?」
「仕方ねーからおれが」「もちろんぼくが」
 智と聖の声が重なった。
 ぎょっとしたように彼らは顔を見合わせる。
「パパ、気がすすまないなら、ぼくにまかせてくれれば」
 と言う聖だが、いいや、と智は首を振った。もっともらしく空咳して、
「さっきの見たろ? みずたまりは何かと危なっかしいからな。監視の目は多い方がいーだろう」
「でも、ぼく、ちゃんと見てますし……」
「みずたまりが何かやらかさないか見守るのは、おれにとって一種の社会的責任であるわけで、その責任を果たさなきゃなんねーってのもあってだな……」
「ハイハイ、わかりました!」
 なおも何か言おうとする聖、次の反論を考えている智の間に、茉莉花がふくれっ面で割り込んだ。
「もう社会的責任でも何でもいいから、ご指導くださいね! 二人で!」

 初心者コースはあのハイリスクな林道に比べると、ずっと緩やかできっちりまっすぐだ。陽が高くなってきたこともあって、ようやく茉莉花の顔に余裕が戻ってきた。
 智の指導はぶっきらぼうながら的確で、そこに聖が理論的な言葉を添えるというかたちで、文字通り手取り足取り、彼らは茉莉花にスキーを教えてくれたのだった。
「やっとスキーらしいスキーになってきた、って気がする!」
 綺麗に滑走して停止すると、茉莉花はぐっと拳を握った。
「ま、それなりにサマにはなってきたんじゃねーかな」
「ママ、そのちょうしです!」
「ありがとう!」
 次に斜面に登ったとき、聖が「かしてください」と茉莉花の両手からストックを取った。
「これでやってみませんか? バランスがとれれば、ストックがなくてもすべれますよ」
「え、ひーくんにストック持たれたらあたし転んだときにどうすればいいの?」
 助けを求めるように茉莉花は智に視線を向けるも、智もこのアイデアに賛成のようで、
「大丈夫、おれがみずたまりの方見て前を滑ってるからヘーキだって」
 と、さっそく滑り降りる姿勢になったのである。
「ほら、おれのストックの先持って滑ってみ?」
 ひょいと後ろ向きに、智は自分のストックを差し出すのだが、それでも茉莉花は割り切れない。
「こ、こんなところ持って大丈夫? 刺さらない?」
「よく見ろ、人間に刺さるほど尖っちゃいない。手袋もしてるしダイジョーブだろ?」
 聖も言い添える。
「ころんだらぼくも起こすの手てつだいますから。あと、立つときはゆっくり立ってください、前かがみになるといいですよ」
「ほら行くぞ。そうそう、へっぴり腰じゃなくて爪先に力入るように……」
 智は宣言通りのことをした。つまり自分のストックの先を茉莉花につかませたまま傾斜に突入したのである。
「ちょ、ちょっと、まだ心の準備が……わああっ!」

 スキー板を外しロッジ内の食事処に席を確保すると、後方に仰け反りそうな勢いで茉莉花は背もたれに身を預けた。
「も、もうダメ、へとへと、お腹すいた!」
 その正面に座ると、智も大きく深呼吸する。
「はー、疲れた疲れた」
 テーブルに両腕を組んで載せ、その上に顎を置いて言う。
「けっこう教えるのって体力要るのな、ひー助」
「それは同いしますパパ」
 さすがに聖も疲れた様子だ。
「体力回ふくに名物のヒョウスイ味噌生姜ラーメン食べませんか、2はいくらい」
「おー、おれもそう思ってたとこだ。おれはむしろ、椀子味噌生姜ラーメンやりてーくらいの気分だな」
「わんこはなさそうですが、パパも2はいですね? じゃあ、3人とも2はいずつで、ごうけい6ぱいということになりますか」
 待って待ってと茉莉花は手を振った。
「……二人とも元気有り余ってそうですね、あたしは一杯で良いです」
「なんで? 有り余ってねーからたくさん食うんだが」
「その発想がやっぱり異次元というか……とにかく、注文しましょう」
 こうしてテーブルには、五つものラーメン鉢が、所狭しと並べられることになったのである。いずれももうもうと熱い湯気を上げており、上から見たら、なんだか山火事でも眺めているかのようだ。
「お、聞きしに勝る見た目だな」
「ショウガのいいかおりがします」
「たまらないですね。じゃ、いただきます!」
 パシッと割り箸を割る音が、三人同時に鳴った。
 たしかに名物というだけあって、食べごたえのあるラーメンであった。本来こってりしている味噌ラーメンが、生姜のぴりっとした刺激のおかげで爽やかな後味となっている。麺は太めでもちもちとした食感、もやしやチャーシューもでしゃばりすぎない味で好感度が高い。
 しばらく三人は言葉もなく、ひたすらにラーメンを味わっていたが、やがて茉莉花がおずおずと切り出した。
「そうだ、思いついたんですが……」
「おー、何?」
 と言う智はもう二杯目に着手しており、
「なんですか」
 聖もそろそろ一杯目が終わる頃合いだった。
「午後は二人でバトルしてきたらどうですか? スキーの。上級者コースを思いっきり走覇しては? あたしはロッジで休んでるから……」
 と茉莉花が言い終えるより早く、
「何言ってんだ」
 麺をすすりながら器用に、智はぺしっと茉莉花の額にデコピンを入れた。
「一緒に滑んなきゃ意味ねーだろ、なぁ?」
「そうです」
 と応じる聖は、スープを飲んだレンゲを置いて口を尖らせる。
「ママと一しょにすべってあそびたいです!」
「三人揃ってるからこそ楽しいんだろうが」
「そうそう!」
 今日の智と聖は妙に意見が合うようだ。二対一の多数決、多数決なら仕方がない。
「じゃあ……そうしましょう」
 スキー三昧のクリスマスは、まだまだ続きそうである。
  




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 桂木京介 GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:水田 茉莉花
精霊:八月一日 智
精霊:
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2016年12月18日

開催中のイベント・キャンペーン

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